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2018年9月 5日 (水)

ソラフェニブによる手足症候群の予防に鰹だしが有効?

2018年9月5日(水曜日)

手足症候群とは、主に分子標的薬という抗ガン剤の使用によって、手足特に指先や足底などの末梢部に、しびれ感〜ヒリヒリ感・皮膚知覚過敏・発赤や、重症になると潰瘍・水疱・疼痛・歩行障害などの症状をきたす疾患です。
特に、進行性肝細胞癌の治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬に属するソラフェニブ(商品名:ネクサバール)やスニチニブ(商品名:スーテント)使用時の発症率が高いとされています。

ところが、この度新潟大学の研究グループは、ソラフェニブによる手足症候群の発症予防に、日本古来の食品である鰹だしが有効である事を発表しました。
その機序として、手足症候群は主に抗ガン剤によって血管障害が誘発され血流が悪くなる事により発症するのに対して、鰹だし中に含まれるヒスチジンという成分が血管拡張作用を有しているため、鰹だしを飲用した患者では血流障害が生じにくくなり、その結果手足症候群の発症率が低下するという事が示されました。

それにしても、抗がん剤による副作用に思わぬものが効果を示すなんて、鰹だしに着目した発想がお見事としか言い様がありません。当に、発想の転換が如何に大切かという事ですね。

2018年8月21日 (火)

CRP値が高い慢性蕁麻疹症例は抗ヒスタミン薬が効きにくい?

2018年8月21日(火曜日)

今月も、先月に続いて慢性蕁麻疹に関するお話です。

通常、蕁麻疹に対する第一選択薬は抗ヒスタミン薬になりますが、我々も時々抗ヒスタミン薬が全く無効な慢性蕁麻疹症例を経験します。
無効である原因がどこにあるのか?これまで全く解ってなかったのですが、モスクワのKolkhir医師達は慢性特発性蕁麻疹患者1253例に対して炎症のマーカーであるCRP(C反応性蛋白)を測定したところ、約1/3の症例でCRPが高値であり、特に1)自己血清皮内テスト陽性例、2)蕁麻疹の活動性が高い症例、3)抗ヒスタミン薬が無効な症例、でCRP値が高かった事を報告しています(Allergy、2018;73:940-948.)。
このうちとりわけ興味深いのは抗ヒスタミン薬が無効な症例との因果関係であり、少なくとも抗ヒスタミン薬が効きにくい慢性蕁麻疹症例に対してCRPを測定する事は今後行ってみる価値があるようです。
そして、症例を集積する事によって、抗ヒスタミン薬が無効なCRP高値の慢性蕁麻疹症例に対して、抗ヒスタミン薬にとって代わる有効な治療手段が見つかる事を切に望みたいと思います。

2018年7月11日 (水)

慢性特発性蕁麻疹の発症にエンテロトキシン特異的IgEが関与している?

2018年7月11日(水曜日)

蕁麻疹はアレルギーの病気だというイメージが一般的に強いため、当院にもしばしば慢性蕁麻疹の患者さんが"何のアレルギーなのか、原因を調べて下さい"と希望して来院されます。
しかし、蕁麻疹のうちでアレルギーが関与する場合は5%程度であるとされており、大部分は特に明らかな原因はなく、肥満細胞の活性化に伴って発症する特発性蕁麻疹であるとされています。

ところが、この度ドイツベルリン大学のAltrichterらは、49人の慢性特発性蕁麻疹患者と15人の健常対象者に対して黄色ブドウ球菌エンテロトキシン特異的IgEを測定したところ、蕁麻疹患者の51%(25人)、健常対象者の33%(5人)で陽性を示した事より,慢性特発性蕁麻疹の発症に黄色ブドウ球菌エンテロトキシンが関与している可能性が示唆されたとの論文を発表しました。

但し、このデータだけでは母集団数も少ないですし著明な有意差を示すデータでもありませんが、これまで明らかな原因はないとされてきた慢性特発性蕁麻疹に対して何らかの原因を探ろうとする姿勢はとても興味深く思われます。
今後色々な因子に対して同様の検討がなされ、興味深いデータが示される事を期待したいと思います。


2018年6月25日 (月)

Gibberellin-regulated protein(GRP)は果物アレルギーの重症マーカーなのか?

2018年6月25日(月曜日)

6月23日(土曜日)は休診させて頂き、患者樣方には大変御迷惑をおかけしましたが、幕張メッセで開催された日本アレルギー学会学術大会に参加し、今回も色々とお勉強してきました。
ここでは、その中から特に印象深かったGibberellin-regulated proteinn(GRP)という果物アレルギーの新規抗原について述べたいと思います。

従来、果物アレルギーは花粉類やラテックスゴムなどとの交差反応により発症するクラス2アレルゲンであり、そのため臨床症状の多くは口唇の腫れや咽喉のイガイガ感といった局所症状に留まるとされていました。
しかし、2013年にモモの新規抗原であるpeamaclein(Pru p 7)が同定され、この抗原はモモ自体の感作により発症し、重篤なアナフィラキシー症状を起こす場合が多いという事が示されました。
さらに近年、この抗原はGibberellin-regulated protein(GRP)という蛋白に起因し、GRPはモモのみならずウメ、オレンジ、ブドウ、ナシ、リンゴなどの多種の果物類と交差反応を示しうる事が報告されてきました
但し、モモやウメではGRPの含有量が多いため摂取しただけでアナフィラキシー症状をきたしうるのに反して、その他の果物類ではモモよりもGRPの含有量は少ないため運動などの手助けが必要であり、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)などの臨床像をきたす場合が多いとの事でした。

この抗原の登場は非常に画期的な問題であり、我々も"果物アレルギーはクラス2アレルギーだから、重症型にはならないよ"などとたかをくくってはおれなくなってきました。
今後は果物アレルギーに関しても、アナフィラキシーなどの重症型をきたさないか?、もしきたした場合にはその抗原はPRPなのか?、などといった点に関して、我々も目を光らせておく必要がありそうですね。

2018年5月 8日 (火)

アトピー性皮膚炎とシラカバ花粉アレルギー

2018年5月8日(火曜日)

シラカバ花粉はリンゴ・モモ・サクランボなどといったバラ科の果物類と交差反応性を有しており、シラカバ花粉アレルギーの患者さんがこれらの果物類摂取後に口唇の浮腫や咽喉の閉塞感などの症状を発症する、いわゆる"口腔アレルギー症候群(Oral  Allergy  Syndrome: OAS)"という疾患は良く知られた現象です。

ところが、この度ドイツ・ハノーバ医科大学のWassmann-Otto医師らは、アトピー性皮膚炎を有しており且つシラカバ花粉症にも罹患している患者群では、バラ科の果物類などのシラカバ花粉症関連食物の摂取によって、遅発性にアトピー性皮膚炎自体の湿疹増悪をもきたす可能性がある事を報告しました。
彼らの報告によると、シラカバ花粉に対する感作を有しているアトピー性皮膚炎患者182人を対象としてシラカバ花粉症関連食物の負荷試験を行ったところ65例で陽性反応をきたし、うち32例では即時型反応のみならず遅発性にアトピー性皮膚炎の湿疹自体の有意な悪化をきたしたとの事でした。
さらに、陽性群では陰性群と比べて、シラカバ花粉およびリンゴの特異的IgE値が有意に高く、またアレルギー性鼻炎や結膜炎の有病率も高かったそうです。

今後、アトピー性皮膚炎の悪化因子の一つとして、シラカバ花粉に対する感作の有無やバラ科の果物類摂取によって皮疹が悪化しないかに関しても注目していく必要がありそうですね。

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