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2018年7月11日 (水)

慢性特発性蕁麻疹の発症にエンテロトキシン特異的IgEが関与している?

2018年7月11日(水曜日)

蕁麻疹はアレルギーの病気だというイメージが一般的に強いため、当院にもしばしば慢性蕁麻疹の患者さんが"何のアレルギーなのか、原因を調べて下さい"と希望して来院されます。
しかし、蕁麻疹のうちでアレルギーが関与する場合は5%程度であるとされており、大部分は特に明らかな原因はなく、肥満細胞の活性化に伴って発症する特発性蕁麻疹であるとされています。

ところが、この度ドイツベルリン大学のAltrichterらは、49人の慢性特発性蕁麻疹患者と15人の健常対象者に対して黄色ブドウ球菌エンテロトキシン特異的IgEを測定したところ、蕁麻疹患者の51%(25人)、健常対象者の33%(5人)で陽性を示した事より,慢性特発性蕁麻疹の発症に黄色ブドウ球菌エンテロトキシンが関与している可能性が示唆されたとの論文を発表しました。

但し、このデータだけでは母集団数も少ないですし著明な有意差を示すデータでもありませんが、これまで明らかな原因はないとされてきた慢性特発性蕁麻疹に対して何らかの原因を探ろうとする姿勢はとても興味深く思われます。
今後色々な因子に対して同様の検討がなされ、興味深いデータが示される事を期待したいと思います。


2018年6月25日 (月)

Gibberellin-regulated protein(GRP)は果物アレルギーの重症マーカーなのか?

2018年6月25日(月曜日)

6月23日(土曜日)は休診させて頂き、患者樣方には大変御迷惑をおかけしましたが、幕張メッセで開催された日本アレルギー学会学術大会に参加し、今回も色々とお勉強してきました。
ここでは、その中から特に印象深かったGibberellin-regulated proteinn(GRP)という果物アレルギーの新規抗原について述べたいと思います。

従来、果物アレルギーは花粉類やラテックスゴムなどとの交差反応により発症するクラス2アレルゲンであり、そのため臨床症状の多くは口唇の腫れや咽喉のイガイガ感といった局所症状に留まるとされていました。
しかし、2013年にモモの新規抗原であるpeamaclein(Pru p 7)が同定され、この抗原はモモ自体の感作により発症し、重篤なアナフィラキシー症状を起こす場合が多いという事が示されました。
さらに近年、この抗原はGibberellin-regulated protein(GRP)という蛋白に起因し、GRPはモモのみならずウメ、オレンジ、ブドウ、ナシ、リンゴなどの多種の果物類と交差反応を示しうる事が報告されてきました
但し、モモやウメではGRPの含有量が多いため摂取しただけでアナフィラキシー症状をきたしうるのに反して、その他の果物類ではモモよりもGRPの含有量は少ないため運動などの手助けが必要であり、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)などの臨床像をきたす場合が多いとの事でした。

この抗原の登場は非常に画期的な問題であり、我々も"果物アレルギーはクラス2アレルギーだから、重症型にはならないよ"などとたかをくくってはおれなくなってきました。
今後は果物アレルギーに関しても、アナフィラキシーなどの重症型をきたさないか?、もしきたした場合にはその抗原はPRPなのか?、などといった点に関して、我々も目を光らせておく必要がありそうですね。

2018年5月 8日 (火)

アトピー性皮膚炎とシラカバ花粉アレルギー

2018年5月8日(火曜日)

シラカバ花粉はリンゴ・モモ・サクランボなどといったバラ科の果物類と交差反応性を有しており、シラカバ花粉アレルギーの患者さんがこれらの果物類摂取後に口唇の浮腫や咽喉の閉塞感などの症状を発症する、いわゆる"口腔アレルギー症候群(Oral  Allergy  Syndrome: OAS)"という疾患は良く知られた現象です。

ところが、この度ドイツ・ハノーバ医科大学のWassmann-Otto医師らは、アトピー性皮膚炎を有しており且つシラカバ花粉症にも罹患している患者群では、バラ科の果物類などのシラカバ花粉症関連食物の摂取によって、遅発性にアトピー性皮膚炎自体の湿疹増悪をもきたす可能性がある事を報告しました。
彼らの報告によると、シラカバ花粉に対する感作を有しているアトピー性皮膚炎患者182人を対象としてシラカバ花粉症関連食物の負荷試験を行ったところ65例で陽性反応をきたし、うち32例では即時型反応のみならず遅発性にアトピー性皮膚炎の湿疹自体の有意な悪化をきたしたとの事でした。
さらに、陽性群では陰性群と比べて、シラカバ花粉およびリンゴの特異的IgE値が有意に高く、またアレルギー性鼻炎や結膜炎の有病率も高かったそうです。

今後、アトピー性皮膚炎の悪化因子の一つとして、シラカバ花粉に対する感作の有無やバラ科の果物類摂取によって皮疹が悪化しないかに関しても注目していく必要がありそうですね。

2018年4月17日 (火)

IgE値測定の臨床的意義について

2018年4月17日(火曜日)

総IgE値とは、元々もっている即時型アレルギー体質の強さの尺度と考えられている検査項目です。
但し、アレルギー疾患以外でも上昇する場合がある事から、総IgE値のアレルギー検査としての診断的意義に関して疑問視する見解も存在しています。
一方、特異的IgEとは個々のアレルゲンに対する反応性の強さを判定する項目であり、0~7の7段階に分かれていますが、2以上で陽性と評価されます。

私自身は、アトピー性皮膚炎の患者さんに対して総IgE値を測定する事は結構意義があると考えており、高値の患者さんに対してはIgE値を下げる効果があるとされているアイピーディー(一般名:スプラタストトシル酸塩)という内服薬を服用する事をお勧めしたりしています。

このような点に関して、国立病院機構相模原病院臨床研究センターの福富先生は「総IgE値は必ず特異的IgEと同時に測定する」事を推奨されており、"総IgE値が1万IU/mlを超える様な場合、個々の特異的IgE抗体価はクラス1~2の弱陽性をきたしても臨床的意義のない偽陽性反応が生じやすく、反面総IgE値が50IU/ml程度の低値の場合には、たとえ特異的IgE抗体価がクラス1~2の弱陽性であっても臨床的意義が非常に強い場合もある"との考えを述べておられます。

一般的に、即時型アレルギー検査では特異的IgE値よりも皮膚テストの方が診断的意義が高いと考えられていますが、私自身もIgE値に関しては皮膚テストと併用しながら総合的に且つ柔軟に判断して、患者さん方のアレルギー素因の強さや原因アレルゲンに関する診断を行っていきたいと考えています。

2018年3月11日 (日)

アトピー性皮膚炎も十人十色

2018年3月11日(日曜日)

3月8日(木曜日)の夜は神戸市立医療センター中央市民病院皮膚科部長である長野 徹先生主催の地域合同カンファレンスに出席し、横浜の あい皮フ科アレルギー科クリニック院長である池澤善郎先生による「皮膚アレルギーについて〜その診断と治療について〜」との御講演を拝聴してきました。
池澤先生は元横浜市大皮膚科の教授で現役の頃は日本の皮膚アレルギー学の第一人者でしたが、教授を定年退職された後にクリニックを開業され、72歳になられた現在でも精力的に診療を続けておられ、個人的にもとても尊敬している先生です。
当日の御講演ではアトピー性皮膚炎を中心にお話しされましたが、開業されて以降むしろアトピー性皮膚炎には様々な多様性がある事を実感する様になってきたと述べられ、"アトピー性皮膚炎も十人十色"との表現をされていました。

従って、その多様性によって治療方針も異なる訳ですが、池澤先生が注目されるアトピー性皮膚炎のサブタイプとして、1)バリア障害型(皮脂欠乏型)、2)食物アレルギー(主に経皮感作により)合併型、3)金属アレルギー合併型(手足または全身の汗疱状湿疹を合併する場合が多い)、4)脂漏性皮膚炎合併型(汗アレルギー、マラセチアアレルギーを有する)、5)ざ瘡または酒さ様皮膚炎合併型、6)心身症合併型、7)ウイルス性イボ合併型(痒疹や苔癬化の病巣を伴う場合が多い)、8)花粉経皮感作合併型、などのタイプを挙げておられました。

アトピー性皮膚炎の治療は症例によっては困難を極める場合も少なくありませんが、池澤先生の様な着目点を取り入れて、ステロイド剤ないし保湿剤の外用と抗ヒスタミン薬の内服といった通常の治療法にプラスアルファの治療を加える事によって、もし治療効果が高まれば素晴らしいなと考えさせられる夜になりました。

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